Art for Children’s SHINEが目指すこと

社会的養護下に暮らす子ども達をはじめ、困難な状況におかれた子ども達へ、アート体験を届け、自分を自由に表現できる「特別な時間」を経験することを通じ、子ども達の中に「自立心」や「自尊心」をはぐくみ、彼らの心身の安定と成長を支援することを目的とする。

社会的養護とは・・・家庭ではなく社会福祉システムの中で養育を受けること

子どもとアート

子どもは、日々、大人と同じように多くのことを考え、感じています。

しかし、言語が未成熟なため、言葉だけで自分の感情を表していくことは困難です。そのため、身体を動かしたり、絵を描いたり、言語以外の手段で感情を表現していくことは、子どもの成長にとって、とても大切な意味を持っています。

ときに子どもは、周囲の大人のために自分の感情を抑制し、心の奥にしまい込んでしまうこともあります。

私たちが支援している子どもたちの多くは、養育環境の影響で、このように自分の感情をうまく表現できずに育ってきた子どもたちです。

感情を抑制することは、子どもたちの成長に大きな悪影響を及ぼします。感情コントロールが効かずに、対人関係でトラブルを抱えたり、学習や日々の生活に必要な記憶機能にも影響します。

子どもたちが、アート表現を通して自分らしさを発見し、明るい希望を持って生きていけるよう、私たちは応援しています。

私たちの活動

  人と比べず 自由を感じて 生きれるように

施設での暮らし

児童養護施設は、主に18歳までの子ども達が暮らしています。施設に入る理由の多くは、虐待。家庭での養育が適さない、難しいと判断された場合、子ども達は、里親家庭や児童養護施設での暮らしを始めます。今まで子ども達が育った環境は様々。十代になっても、ほとんど学校に行った経験がなく、文字が書けない子もいます。子ども達が、本来吸収するはずだった学びや体験を取り戻すため、一つひとつ寄り添い、支えます。

子ども達が暮らす児童養護施設での生活は、安心・安全な環境であるけれど、多くの制約の中で暮らしています。夕飯の材料をスーパーに買いに行く。そんな日常も、集団生活では難しいことも。台所からのにおいをかいだり、お風呂を入れたり。家庭で何気なく行われている体験によって、私たちは様々な感覚を身につけています。こうした体験の不足を補うことが、施設生活では求められています。

・・・アートセッションの日。私たちは、毎回カゴにたくさんの材料を詰め、施設に向かいます。特別なもの持ってきたよ、という思いをこめて。カゴの中身を早く見たい!飛びついている子も。

木の枝や葉っぱなど自然素材、アクリル絵の具、石粉粘土などの特別な画材と出会うことで、素材に感動したり、愛おしく感じたり。自分の気持ちを表現することをあきらめてしまった子ども達の固まった心を、素材を通してゆるめていきます。

子ども達への支援

子ども達は、学習や経済援助など、様々な支援を受けながら暮らしています。虐待を受けた子ども達の多くは、学習困難や対人関係のトラブルを抱えていて、こうした症状と虐待による脳の機能低下との関係が研究されています。生きるために必要なスキルを身に付けることは、子ども達が生きるために必須なもの。

一方、子ども達の多くは、自分が生まれたことに罪悪感を感じていたり、自分という存在を肯定できない感覚を持っていたりします。十代の多感な時期に入ってくると、自分が体験した人生に対する心の整理がつかず、自害する子も少なくありません。子ども達が生きていくためのスキルを支援することも大切ですが、「生きたい」と思う希望があってのもの。子ども達の心の中に、希望をはぐくむこと。私たちが提供するアートは、生きるために必須なものではないかもしれません。けれど、人間として成長し、心豊かに生きるために大切なものだと信じ、私たちは歩みを進めています。

愛着形成

私たちは、幼少期に特定の養育者と愛着を形成します。「愛着」は心の安定、基盤となるもの。愛着が形成され、心の基盤があることで、困難な場面にあっても、臨機応変に対応したり、乗り越える力が沸いてきます。愛着は、防護服、プロテクターのようなものなので、何枚も着ていれば、一枚はがされても、それほど影響がありません。でも、数枚しか身に着けていなかったら… 雨風にさらされて、心はいつも緊急事態の警報を出してしまいます。愛着が未形成の子ども達は、常に不安な心をかかえ、落ち着くことができません。

しかし、たとえ、幼少期に愛着形成がなされなかったとしても、その後の体験、第三者から無条件に愛される体験を得られれば、心の基盤の再構築は可能とされています。それは、決して簡単な道のりではありません。でも、私たち一人ひとりが、この世に生まれてきた子ども達を愛おしく思い、尊重する気持ちがあれば、いつの日か、虐待を経験した子ども達の心にも礎が築かれる、と願っています。

・・・食べ物は生きていく基本となるもの。虐待環境を経験した子ども達は、食材と触れ合う体験や知識が極端に少ない子が多くいます。アートセッションでは、旬の食材との出会いを大切にしています。制作が終わったあとは、みんなパクパク。レモンだって、塩だって、みんな食べてしまいます。

一見、不思議な行為ですが、愛着が未形成な子ども達によくみられる現象です。制作を通してモチーフである食材に愛情が生まれ、その愛情がかかったものを自分の中に取り入れたい、という愛情再生のサイクルだと、私たちは理解しています。

主な活動

◆施設での定期的なアートセッション

【児童養護施設】 

野の花の家 (千葉県木更津市)

鎌倉児童ホーム (神奈川県鎌倉市)

聖園子供の家 (神奈川県藤沢市)

聖友学園 (東京都杉並区)

【児童発達支援事業所】

結 (千葉県市川市)

◆アート・デイキャンプの実施。

沿革

2012年 児童相談所の職員だった柴田代表が、木更津市の児童養護施設でアートセラピー活動を始める

2014年 活動に賛同した2名のメンバーが加わり、団体名を「Art for Children’s SHINE」と定める

2015年 新メンバーを募り、神奈川県鎌倉市の児童養護施設でも活動を開始

     翌年、千葉県市川市での活動が始まる。

2016年 児童養護施設の子どもたちを招いてサマー・アート・キャンプを実施

2017年 千葉県より特定非営利活動法人の認証を受ける

2018年 東京都杉並区の児童養護施設での活動開始

2020年 神奈川県藤沢市の児童養護施設での活動開始

*登録している会員は24名(2022年4月現在)。

ボランティアさんにもご協力いただいて活動しています。

助成履歴

 2017年 公益信託ちばぎんハートフル福祉基金 児童発達支援事業所~結~におけるアートセラピー活動 

 2018年 公益財団法人俱進会 児童発達支援事業所~結~におけるアートセラピー活動 

 2018年 楽天未来のつばさ アート・デイキャンプ費用 

 2019年 公益財団法人パナソニック教育財団 子どもたちのこころを育む活動 優秀賞

 2020.21年 公益財団法人小林製薬青い鳥福祉財団 児童発達支援事業所~結~におけるアートセラピー活動